アンナ・カヴァン『ジュリアとバズーカ』(千葉薫＝訳、サンリオ、サンリオSF文庫、1981)1981カバースレ・キズ・ヨゴレ少、背表紙上部ヨレ(画像3枚目参照)・下部ヨレ(画像5枚目参照)、裏表紙ヤケ・ヨゴレ／本体小口ヤケきつめ・キズ・ヨゴレ管理s21アンナ・カヴァンの世界――それは麻薬と注射器（つまりバズーカ砲）が織りなす戦慄的な人間の生理を執拗に追いつめていくリアリズムの手法に背筋が寒くなるような迫力がある。「ある暑い夜、一匹の豹がわたしの部屋に入って来て、ベッドの上のわたしのかたわらに横たわった」という書き出しの「ある訪問者」。ぼんやりと霧に包まれて仮面の群をはねとばしながら車を運転していく「霧」。金属製の車体に魔法のように包まれて、気楽に命を危険にさらすカー・レーサーを描く「英雄たちの世界」。丸々とおいしそうな少女をくわえて引きずっていく豹、そのスピード感、ハイパワーの車メルセデス、注射器と薬――つまり豹の金と黒の斑が奔放に入り組み、幻想と現実が縞となってやわらかな感覚で混じり合う絶望とエクスタシー、憧憬と恐怖の旋律を清冽なまなざしで見すえ、跳梁するイメージをクリスタライズしていくアンナ・カヴァンの比類ない短篇集。（裏表紙より）