図柄表：女神像 図柄裏：ザクロ 発行地：フランス共和国 発行年：1848年 彫刻師：Gayrard 銘文表：REPUBLIQUE - FRANCAISE 銘文裏：20 FRANCS 1848 額　面：20フラン 材　質：錫 直　径：21.0 mm 重　量：2.75 g 分　類：VG 3025 備　考：エッセイ（パターン）プルーフライク フランスは王国から共和国になった際、コインから君主像を廃し、フランスの象徴物を新たに刻む方針となった。その際、新たに流通させる貨幣のデザインコンテストが行われた。本貨は、その際に造られた公募出品用のエッセイ（試作貨幣）である。 試作貨であるため、銀でなく錫で造られており、また当然型が新しいうちに打たれていることもあって、表面はプルーフような美しい輝きを呈している。また、流通前の貨幣であるため、エッジにギザがないプレーン仕様で造られている。このコンテストでは各々のデザイナーが描くフランスを象徴する女神像が応募され、最終的にEugène-André Oudinéによるケレス像が採用された。フランスの貨幣が決まるまでの過程が見られる貴重な資料と言えよう。 裏側の植物装飾は、フランスの貨幣のお決まりのデザインだが、ザクロが描かれているのは興味深い。ザクロは古代ギリシア時代より、実が数多く成ることから豊穣の象徴として扱われきた。古代ギリシアコインでも、小アジア地方の貨幣にはザクロの描写が見られる。そうした古代の系譜を継承したデザインに、当時のフランスの古典懐古の動きが見て取れる。 近代フランスにとってギリシア・ローマの文明は模倣すべきものであり、特に王侯貴族の間では古典の学習とラテン語の習得は必須とされた。古代の知識を身に付けていることは教養のひとつとして見做され、ステータスとして重要視された。